今回の「五大ツールが語るRPAの未来」では、オートメーション・エニウェアに迫っていこうと思う。
日本への参入は一番後発だったが、瞬く間に五大ツールの地位を獲得したアメリカ発のベンダーだ。
アメリカにおいてシェアNo.1を誇る世界的RPAベンダーは、日本のRPA業界をどう捉えているのか。
そして、RPAを使ってどんな社会を実現しようとしているのか。
日本法人のシニアセールスエンジニアである秋本尚吾氏に、オートメーション・エニウェアが掲げるビジョンとそのロードマップを聞いてきた。

秋本 尚吾
大手SI企業でシステムエンジニアとして勤務したのち、外資系の大手IT企業数社で開発やセールスエンジニアを歴任。
2018年よりオートメーション・エニウェアに入社し、RPAのセールスエンジニアとして技術面から営業を支援している。
徹底して追求する内製化
——オートメーション・エニウェアの強みを教えてください
弊社RPA製品Automation Anywhere Enterpriseの最大の強みは、内製化が容易という点です。弊社製品に搭載された様々な機能は、これを実現するために開発されています。
Automation Anywhere Enterpriseの持つエンドユーザー向けの強みは大きく分けて3点ありますね。
まずは拡張性、すなわちソフトウェアロボット「Bot」をたくさん開発できるということです。
プルダウンリストやチェックリストで選択するという簡単なUIで条件や繰り返しを設定できたり、変数に型の定義がなく迷わないで済むなどの機能があり、 比較的簡単な操作で開発できるように工夫しています。
また、 1つのコマンド (ロボットの動作内容) を一行で表したスクリプト形式の開発画面により、Botの全体像を一画面で把握し、編集箇所を容易に探し出すことができます。
そして現在、フローチャート型のUIも開発中です。(近日公開予定)
上記に加えて、UIが日本語化されたため、2週間程度で一つの業務プロセスを自動化するためのBot開発することができ、様々なお客様が導入一年で数百数千のBotを展開することに成功しています。
2点目は、自動化の多様な要望に一つのRPA製品で応えられるように、次のような3つの自動化手法の全てに対応していることです。
それだけではなく、自動化手法も3パターンご用意しています。

詳細は図の通りなのですが、
無人PCで動作する完全自動化型のUnattended RPA。
人間との協働を念頭においてデスクトップで稼働するAttended RPA。
そして、非構造データにも対応するコグニティブRPAの3つに分かれますが、Automation Anywhere RPAは、その全ての自動化シチュエーションに対応できます。
特にAttended RPAでは、大規模にBotを展開するスケーラビリティを大きく活かすことが可能になります。
例えば、コロンビアの金融機関であるBancolombia S.A.では、送金手続きの自動化を行うBotを639支店において9,200台のPCという大規模な展開を行ったことによって、年間12.7万時間の削減と1,900万ドル以上の効果を得ることができています。
そして、3点目は、AIによる適応業務の拡大です。
自動化する対象のUIが変更になっても自動で追随し、エラーを起こさないようにするAISense機能の導入や、サードベンダーのAIプラットフォームと連携することができるようになったことで、幅広い業務に対応できるようになってきています。
——適用業務を拡大すると共に、スケーラビリティを担保する仕組みになっているのですね
その通りです。
また、管理側としても役立つ機能が大きく3つあります。
1つ目は多様な環境で動作可能であること。
物理環境・仮想環境・デスクトップ・データセンター・クラウドなど、あらゆる環境で利用することができ、HA/DR構成が可能なため、重要な業務プロセスの自動化が可能です。
さらに、物理環境・仮想環境・デスクトップ・データセンター・クラウドとあらゆる環境で利用することができます。
2つ目として、セキュリティ・コンプライアンスでも強みがあります。
GDPRに対応しており、金融機関でも利用できるセキュリティレベルを搭載するだけでなく、開発者にパスワードなどの実際の値を参照させない「Credential Vault」機能やロールベースのアクセス制御など、グローバル共通のコンプライアンスを加えています。
そして最後に、リアルタイムでの分析が可能であることも大きな強みです。
RPAに組み込まれた「Bot Insight」により、組織全体のBotが生み出すビジネス価値を数値化して、リアルタイムで監視することができます。
このような管理機能に加えて、サポート体制も充実させているので、非常に管理しやすいRPAになっています。
——サポート体制というのは?
新バージョン提供開始後、3年間は同一バージョンのサポートを提供します。24時間365日対応するサポート体制です。これに加えて、セールスエンジニアが業務部門への集中的開発研修である「ボッタソン」を最大2日間無償で行なっています。
さらに、E-ラーニングプラットフォーム「Automation Anywhere University」でユーザー自身で学習したり、開発者同士がナレッジ共有を行うことができる場として「Apeople」というコミュニティサイトを提供しています。
これら全てが日本語化されており、内製化を着実に行えるように支援しています。
キーワードはデジタルワークフォース
——御社のRPA製品の運用において、ポイントはありますか?

仕事という行為を分類していくと、実行・思考・分析の3種類になると思います。
このような行動を「デジタルワーカー」が行えるようにするべきだと考えています。具体的には、
実行を担うのがエンタープライズRPA。
思考がAI(コグニティブ)。
分析が、Bot Insight(リアルタイム分析)に該当する形になっています
これら3つを足し合わせたものを、弊社では「デジタルワークフォース」と呼んでいて、これら全てを導入することを目標にする必要があります。
そのためには、3つのプロセスがありまして。

シンプルかつ価値のあるロボットを作って、効果測定を行う「Start RIGHT」段階。
導入対象を拡大し、ミッションクリティカルな対応を行うとともに、非構造データを自動化していく「Scale FAST」段階。
そして、人事制度への取り組みを行い、ロボットの適用面積を拡大する「Transform BIG」です。

「内製化」や「展開の拡大ができる」というのは、上述してきた弊社製品の強みをまとめた言葉です。
これらの機能をうまく利用して展開することが、RPAの運用に成功するために必要なことだと考えています。
RPAの普及はまだまだ
——RPAの市場動向をどう見ているか

弊社が昨年9月に行ったリサーチ結果では、97%の企業がここ一年以内にRPAを導入する、または導入済みと答えていいます。
Make Work Human. Findings from a major academic study about …
これは昨年の9月に大規模の企業様だけを対象にした調査でしたので、日本における大企業はほぼRPAを導入済みだということを示しています。
これは世界的に見ても非常に高い数値なんですよね。
しかしながら、同じレポートで効果があったと答えた日本企業は59%しかありませんでした。
これは他の国と比べても低い割合になっています。
これが日本におけるRPAの現状だと言わざるを得ません。
実際、弊社にお声がけいただくときに伺うお話は、RPAツールを導入してみたが上手くいかない、というものです。
サーバー型ではなかったためにRPAが属人的なツールになってしまったという状態や、内製化が上手くできずに途中で頓挫してしまったという2点が多く聞かれました。
——それを踏まえて御社の今後は?

上図の弊社ロードマップでお話しすると、現在はLEVEL 2.0にあります。主に大企業で導入いただく段階です。
そしてこの先は、もっと中堅の企業様や中小企業様にもお使いいただく段階になると考えています。
そのためにはいくつかステップがありまして。
例えば、AWSの管理や買掛金の処理を行うデジタルワーカーを一式ダウンロードして再利用することができるマーケットプレイス、「Bot Store」を用意しています。
つまり、マーケットプレイスから人と一緒に働いてくれるデジタルワーカーをダウンロードして、すぐに利用を開始でき、開発コストを下げる仕組みを提供しています。
これを有効活用してもらうことで、中小企業様にも使っていただこうと考えています。
もちろん、開発の敷居を下げるというアプローチも同時に行なっています。
さらに、弊社の製品は高額と思われているようですが、中小企業様でも使えるような価格体系でご提供しています。
価格が非公表なので、今お伝えできないことが心苦しいですが・・・。
——無償版の提供はこれが狙いだったのですか?
いえ、違います。
弊社の場合、無償版はフリートライアルとコミュニティエディションの2種類があります。
前者は30日間利用可能などのような企業様でも利用いただける体験版ですが、後者は小規模なお客様や開発者、学生の方が期限の設定なく無償でお使いいただけるようになってます。
こうしてBotおよびデジタルワーカーを作る方を増やしたいと考えています。
実際、RPAの展開が思うように進まない理由の一つには、Botの開発やメンテナンスにコストがかかり過ぎるために業務の自動化が進んでいかないということがあります。
このコストが低くなれば、導入した企業にとってもプラスになります。
E-ラーニングプラットフォームのAutomation Anywhere Universityも無料ですので、こちらを使って製品知識を習得していただき、何か問題があればApeopleコミュニティフォーラムに質問していただくことで回答を得ることができるのです。
こうしたサポートも全て日本語でご提供しています。
無償版では弊社がサーバーを用意していますので、クラウド型のような形で使っていただけます。
また、今後はフローチャート形式の開発ツールや、有償のSaaS型サービスも提供する予定です。
こうしたツールやサービスの提供が始まれば、今まで以上に簡単に導入していただけますし、Botの実行だけではなく、開発ツールもブラウザに移るので環境整備も容易になります。
——AIとの組み合わせでRPAがどこまでできるようになるか

RPAがどれだけAIの機能を導入しても、人の仕事全てを取って代われるものではありません。
だからこそ、次の世代の働き方は、人とデジタルワーカーの協働で成り立つと考えています。これは変わらないです。
先述したコロンビアの金融機関の事例はこれを具現化しています。データの参照や取り出しなどの単純作業を自動化したことで、担当者の方は他のことや次の案件に対応できるようになっています。
——人とロボットの共存がキーワードなんですね
その通りです。
Botと協力することで、コンピューターが出てくる以前の状態に戻る、というイメージで捉えていただけます。
——というと?
個人的な意見ですが、コンピューターが出てくる前、働いている人は今より楽だった面があると思っています。
例えば、宿泊費の精算は、今はシステムがあるから自分でやらなければならないですが、昔はシステムがないので、他の担当者に丸投げすれば良かった。
さらに、日本の企業にある様々なシステムは、その間の接続が大変な作業ですが、これも昔はコンピューター自体がなかったから存在しない仕事です。
だからこそ、こうした領域でRPAを上手く使えると思います。
担当者に丸投げすれば経費精算が終わっていたように、ボタンを押したらRPAが経費精算を完了させてしまう、というイメージです。
このようにRPAを用いることで、コンピューターが出てくる前の状態にまで戻せると思っています。あくまでも個人的な意見ですが (笑)
——現場社員がロボットを作るイメージ?
上記で述べたようなAttended RPAは全社員がRPAを作るようになるというイメージを持っているかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
全社員がBotを使う、ということです。
これはボタンを押してBotを起動しデジタルワーカーと協働するという意味であり、Bot自体を開発することとは違います。
この利用環境が本来のRPAの姿ではないかと思います。
もちろん、Botを開発する敷居自体はどんどん下げているんですが、それだけで全員の方が作れるとは思っていません。
全員が開発者である必要はないのですが、全員に使っていただけるように工夫しています。
——将来のRPAはどういう使われ方をしているか?
繰り返しになりますが、内製化が重要です。
それを前提にして、全ての人のPCにBotの実行ツールが入っている状態を目指しています。
例えば、Microsoft Officeが全てのPCに入っていると思うんですが、それと同じようなイメージですね。
もちろん、開発ツールではなくて、実行するツールです。
全ての会社において、自社で必要なBotの実行ツールが全従業員のPCに入っている。
こういう状態を作り上げることができたら、上述したようなコンピューターが誕生する前の状態を生み出せるのではないかなと思っています。
人とデジタルワーカーの共存を目指して
RPAとAIの組み合わせが注目される近年。
オートメーション・エニウェア は、AIだけでなく分析機能も盛り込んで、徹底した内製化主義に立ち、人とロボットが共に働く世界の実現を追求していた。
人からロボット的な作業を取り除き、人の知力をフルに生かして大きなことを成し遂げられる社会へ。
オートメーション・エニウェアの挑戦は続く。
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