RPA 事例 大和ライフネクストの画像

不動産業界の働き方を変える~大和ライフネクストの現場開発RPA~

RPA 事例 大和ライフネクストの画像

不動産業界はIT化がなかなか進んでおらず、旧態依然とした業界の一つであることが課題となっています。

その中で、現場の社員がRPAを開発して社内の業務効率化を目指している会社が存在することを知っているだろうか。

会社名は大和ライフネクスト株式会社。

今回は不動産業界が抱える課題や、現場開発によるRPAスケールに成功した方法についてインタビューを行った。

古い風習の残る不動産業界を変える

——編集部:不動産業界は全体的にIT化が遅れているとされていますが、RPAを社内に導入した背景を教えてください。

事業を行なっている側として、 同じ処理を繰り返し行う単純作業をなんとか効率化できないものかと考えておりました。

その中で、ちょうど2、3年前にRPAというものをウェブサイトなどで知る機会がありました。

また、当社では年に一度、新規事業や業務改革を募集する制度があり、生産性の向上や業務改善に悩んでいた背景もあったためRPAを用いた業務改善を提案したことが導入のきっかけです。

導入するに当たって、初めから全社で展開するという話もあったのですが、どのくらいの効果が出るかもまだはっきりしていなかったため、部門単位での導入からスタートしました。

その後、1年ほど部門で試用して効果が見込めたため、昨年の夏頃から全社展開を行いました。

——編集部:同じ処理を繰り返すという言葉が出てきましたが、業界全体としてどのような業務があると考えていますか。

とにかく紙媒体の書類が多いという点です。

例えば、賃貸物件を運営している会社の多くは、入金や書類の確認や催促を手作業で行なっています。

契約書であれ業務報告書であれ、とにかく紙を使って業務を行なっていることがほとんどです。

また、他にも現場の営業職以外にも事務職の社員も多く在籍しているため、より働きがいのある会社にしていくためには、定型的な業務に追われるだけでなく、より各個人の能力を発揮できる環境を作っていく必要がありました。

——編集部:具体的にどのような業務をRPA化したのでしょう?

一例ですが、メールの一斉送信をするロボットを作成しました。

大和ライフネクストでは、清掃や設備点検、警備といった仕事をオーナー様から引き受けたのち、協力会社に業務委託を行なっています。

事業推進部では北海道から沖縄に至るまで、約2000社に及ぶ協力会社への発注の取りまとめを10人程度で行なっていたのですが、一つのお知らせや督促をメールで送るだけでもかなりの労力となっていました。

そこをなんとか効率化したいと考えたのがきっかけです。

これまでに全社で合計150台ほどロボットの開発を行いました。

そのうち、現在でも稼働しているのは約90台ほどになっています。

稼働しているロボットの7、8割は事業推進部の10人ほどで運用している状況です。

また、大和ライフネクストでは、RPAの他にもOCRを導入しています。

実は、事業推進部に関してはRPA単体で動かしているところは少数で、RPAとOCRを併用しているところが大半なんです。

他にはkintoneを利用したり、Microsoft社の提供しているVBAを利用して、もっとRPAをスケール化できないか検討しています。

業務の生産性を上げるために、RPAを中心とした様々なツールを活用して自動化を行っています。

——編集部:OCRを利用していると、帳票ごとに各社フォーマットが違うために読み取ることが難しい場合がありますが、大和ライフネクストではどのように解決しているか教えてください。

取引相手が2000社まで及ぶと、デジタルに慣れている会社からそうでない会社まで千差万別です。

全体の3割程度の取引企業にはウェブ上で専用の報告書を作り、それに登録してもらうことで対応しています。

残りの7割程度の取引企業とはメールやファックスでのやり取りになりますが、OCR化しやすいフォーマットを利用してそれに書いてもらうことで対応しています。

このやり方だと、どこの会社であるか・どの状態であるかということがデータとしてまとめて取得できるため、後工程の作業効率まで考えると非常に効率的です。

そして、残りの1割程度の取引企業はその会社独自のフォーマットを利用しています。

こうなるとOCRでの処理は不可能なので、基本的には人の力を使って登録作業を行っています。

——編集部:RPA導入によりどの位の業務時間が削減されましたか。

事業推進部だけで、これまでに年間約6000時間以上の削減が見込まれ、今後もこの数字は上がっていくと考えています。

それだけではなくて、RPAがあるからこそ行えるようになった業務もあるんです。

例えば、メールでの督促は人の手で行うとすればかなり労力がかかるので、通常であれば月に何回も行うことはありません。

しかし、RPAがあるから結果的に月に何回でも行うことが可能です。

また、何度も繰り返し行う単純作業をやってくれるおかげで、気持ち的にも楽になることも多いですし、業務改善に直接自分たちが関わることで働きがいを感じるという声も社内で上がっています。

RPA導入は単なる業務時間の削減という以上の価値も生み出していると考えています。

情報システム部のサポートの下、現場開発の推進で成功を導く

——編集部:RPA導入の際に重要となってくる点の一つとしてツールの選定があると思いますが、その際に気をつけたポイントを教えてください。

RPAツール自体は他にもあったことは知っていましたが、知識については乏しかった上、部門としてのスモールスタートであったこともあり、 まずはBizRobo!を使ってみることにしました。

その後、全社にスケール化していくという話になった時、世間でもRPAという言葉が徐々に浸透してきたということもあり、他ツールと比較検討する機会がありました。

その当時は情シスが開発を行うという前提があったため、情シスが手中に収めやすく、また全社にスケール化していくに当たって、いかに効率的でかつ管理が行いやすいかという点を重視し、比較検討・PoCを行ったうえで決定しました。

また、親会社の大和ハウス工業でもBizRobo!を導入することになっていたことも後押しとなりました。

——編集部:RPA導入を行う際には、どのような組織体制で行なっているのでしょうか。

大和ライフネクストでは、基本的に現場が開発して情シスがサポートする体制を取っています。

作成するロボットやスケジュールの決定は、各部門が与えられた権限の中で現場の人間が自由に行っています。

情シス部門としては作り方を指導するほか、システムにおける権限の問題のサポートや部門単位では開発が難しいものを開発しています。

——編集部:現場で開発するという選択をされたきっかけは何ですか。

実は2年ほど前にRPAを導入する際には、導入に携わっていたベンダーの方に開発を行ってもらっていたんです。

その後、情シスの助けも借りながら開発を行なっていたのですが、その方法だとなかなかスケール化していきませんでした。

何かヒントがないか頭を悩ませていたところ、 他社事例で社内に数百人の開発者を育成し、RPAの社内スケールに成功したという講演を聞き、非常に感銘を受けました。

その後、縁がありその研修を受けた際に、鍵は現場開発であるということを知り、現場で開発を行うという選択をしました。

——編集部:実際に現場開発を行なってみて、どのようなメリットを感じましたか。

例えばRPAロボットの開発を外注すると、要件定義が異なっているためそこで時間がかかってしまいます。

その点、現場開発を行うとロボットを作る人と使う人が同じであるため、要件定義を考えながら作成することが可能です。現場の人間が自身の業務が削減されていることを実感しやすい点もメリットだと考えています。

例えば、「この業務はロボット化しやすいからロボットに任せよう」という判断はもちろんですが、「ロボット化するとメンテナンスが大変だから前後だけロボット化する」というように柔軟に判断することも可能です。

あくまで事業推進部の本業は事業の方なので、ロボットの作成により余計な業務が出てきては元も子もありません。

そのためロボットの知識があると、非効率なロボットを作成することは無くなります。

それがロボットの大量生産や使い勝手の良さにも繋がっていると考えています。

——編集部:柔軟に判断することが可能と言われましたが、RPA化をするか否かの具体的な選定基準を教えてください。

一言でいうと、いわゆる定型作業とされるものですね。

例えば一度に複数のことができたり大量のことができるといったものがロボット化する業務の対象となります。

また、ロボットは人間と違って24時間いつでも稼働させておくことが可能です。

そのため、大幅な時間削減には繋がらないが深夜など人が仕事をしない時間にロボットに作業をさせることで、結果的にスピードアップにつながる場合もロボット化の対象となります。

——編集部:RPAは実際に利用してみると言われているよりも難しいという声も多いですが、開発者を育成するためにどのような体制をとっていますか。

大和ライフネクストでは、週に1回ほどレクチャーを受けながら、簡単なロボットから作っていくようにしています。

また、最初の2、3ヶ月は自分が作成したロボットを、一緒に研修を受けたメンバーに見せ合う「お披露目会」のようなものを行っています。

これにより、ロボット作成のプロセスや行き詰まっている箇所を他のメンバーとを共有し意見を言い合うことができるようになったため、更なる学習に繋がりました。

そうしたことを繰り返すことで、研修を受けた社員の知識量も増えて色々なパターンのロボットを作成することができるようになりました。

今では、一般事務として入社してきた社員でもロボットを作成できるようになっています。

——編集部:RPAを利用していて、一般社員の方から自分の仕事が奪われるというような声が上がることはありませんか。

大和ライフネクストでは、そのような声が上がったことはありません。

そもそも、今ロボット化しただけで奪われるような仕事をずっと行なっていたら、いずれ必ずその仕事自体なくなる日が来るのは間違いありません。

そのため、自身も変わっていかないといけないと考えています。

RPA化によって自身が変わることのできるよい機会を得られたと考え、個人の業務がより楽になるように前向きに改善を行なっているというのが実態です。

その結果、今では社員が月に2、3回在宅勤務を行うこともできるようになっています。

業務が楽になることを目指しつつ、一方で品質は落とさないようにするためのRPAの使い方を共有することが社内の共通認識として浸透しています。

RPAは、あくまで手段の一つ

——編集部:実際にRPAを運用していくに当たって、ある程度のイレギュラーな事態は起こるものだと思うのですが、運用中に困ったことはありましたか。

事業推進部では、情シスと比較して取り扱えるデータの領域が少ない場合もあります。

その場合、情シスの力を借りて必要なデータだけ貰えるような仕組みを作らなければならないこともありました。

このように、現場開発を進めていく中で事業推進部単体では解決できないような問題が生じた場合に、どう解決するかという点は特に困ったことでした。

また、RPAをどのように全社的に展開していくかという点は継続的な課題であると考えています。

——編集部:現段階で既に他部署に展開するために行なっていることはあるのでしょうか。

現在、RPAを導入したいと手を挙げてくれている部署が出てきています。

そのため、導入希望の部署に対して研修を行いつつ、ロボットを一つ一つ作るところからフォローを行っています。

このように部署間でRPAが広がりを見せているので、今後の展開が非常に楽しみです。

——編集部:今後多くの部署でRPAを導入していく機会が増えると思いますが、より効率的にRPA学習を進めていくために考えていることはありますか。

多くの部署でRPAの導入を進めていくと、どうしても情報を持っている部署とそうでない部署の間に差が生じてしまうことが課題としてあげられます。

そのため、社内のRPA開発者同士が情報共有をできるコミュニティサイトを情シスが主導して作っていきたいと考えています。

コミュニティサイトを利用することで、情報を持っている部署とそうでない部署の接点を作ることができれば部署間でRPA導入の進み方の差が生じることはなくなると考えています。

また、コミュニティサイトが開発者同士互いに切磋琢磨できるプラットフォームにもなればより良いと考えています。

——編集部:最後になりますが、大和ライフネクストにおける今後の自動化の展望やこうしていきたいというビジョンなどがあれば教えてください。

事業推進部は会社の働き方改革の推進を担当していることもあり、会社内で人がやるべき仕事に注力できるような環境、人間がより能力を発揮しやすい環境を作っていくことが使命だと考えています。

そのためには、RPAに固執しすぎないことが必要です。

この半年くらい全国の事業部を回って、どのような業務を効率化したいかをヒアリングし、それを元にソリューション化するということを行なっていたのですが、その際はRPAだけでなくOCRなどの他ツールも利用しています。

業務効率化のために大和ライフネクストが持っている武器はたくさんあるので、それらを上手く組み合わせてベストな使い方をすることが大切だと考えています。

また、現場でロボットを開発できる社員が増えた今、作りたいロボットを作ることができないというような事態は、全社的にスケール化していくに当たって最も避けたいことです。

情シスとしては現場のロボット開発者を育てる環境や、作成したロボットを使用できる環境を整えていくことが必要であると考えています。

それだけではなく、今後を見据えて既存の技術以外にも利用できそうなものを貪欲に吸収して各部署に提案することで、事業部側にいい影響を与えていくことができればいいですね。

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