昭和企業RPA

【独占取材】昭和気質の会社にて、RPA導入に奮闘する女性社員の苦悩と希望に迫る。

昭和企業RPA

RPAとは、人が行っていた簡単な事務作業をロボットで行う業務改善のためのツールである。

と言っても、PCやサーバーでロボットが稼働するソフトウェアであるから、企業にRPAを導入するためには、社員に、組織に、ITへの耐性がある程度必要なことくらいは、想像に難くないだろう。

しかし今回取材した彼女は、自身が勤めているいわゆる“昭和気質”の残った製造業の中小企業で、RPA導入に奮闘しているという。

今回匿名取材に応じてくれた、Aさん。

その導入への経緯と苦悩を知ると、日本社会が潜在的に抱えている、RPAやITに対する深い課題が見えてきたのだ。

“Gmail”を知らない

みなさんは“昭和気質の会社”と聞いて何を思い浮かべるだろうか。

2017年11月のある東洋経済の記事には、「昭和気質の会社=若者が辞めていく会社」とし、その特徴を質より量を求められること、褒めて伸ばすのではなく叱って頑張らせること等を挙げている。

東洋経済オンライン

10月31日配信の「『入社3年以内に会社を辞める人』の4大特徴」では、自分を変えずに「環境」だけを変えようとして短期離職…

Aさんが働く会社はいわゆる「昭和気質の会社」だという。

「会社のために自分の時間を犠牲にして、夜遅くまで残業している人が『頑張っている』と褒められる文化。定時で帰る人は頑張っていない、と言われてしまうんです。」

少し笑いを交えながらこのように語る。

働き方改革と叫ばれ、残業時間を減らす事に一生懸命になっているこの世では、確かにその状況の違和感は否めない。

「社員は、多くの書類を手書きで作成しています。綺麗な字で一生懸命、丁寧に書くことが褒められるんです。書類をPDFで保存するという考え方もなく、丁寧に整然とファイリングされています」

このような状況なので、よくニュースにあがるような大手企業がRPAを導入することと、彼女が勤める“昭和気質”の会社でRPAを導入するのでは、状況がまったく違う、と言う。

「RPAの世界にいる人からすると、昭和気質の会社は想像できないような世界なのでは。わたしの会社ではITに強い社員を探す一つの指標として“Gmailを使っているか”というのがあります。この現場感をなんとかRPA関係の方々に知ってもらいたい」、と彼女は強く訴えた。

「グループウエア・スラック・スプレッドシート・ワークフローなどの言葉は社内では通じません。」

ITを取り入れていない、というよりむしろ“ITを知らない”会社、といったほうが正しいだろうか。役員の説明資料からは馴染みのないカタカナ語を外し、日本語に置き換えて作成するという。

RPAに没頭する、昼休みの20分。

「2018年8月に一般職がなくなるというニュースを目にしました。これがRPAを知ったきっかけでした。」

彼女はバックオフィス全般、その中でも採用をメインに担当しており事務職社員の仕事がなくなることに人一倍危機感を覚えたという。また、同僚の残業時間や作業量の多さには日ごろから疑問を持っていた。

これらをITやRPAの力を借りて解決し、社員たちを救いたい、そんな強い意志と責任感のもと、RPA導入を決意したという。

「ITは未経験分野で知識を一から得なければなりませんでした。ひたすらネットで検索をし、本も購入し『PRAとはいったいどんなものなのか』から学びました。分からないことはRPAのメーカーに片っ端から電話をしました。実際に6種類のRPAツールメーカーのプレゼンを聞き、質問を重ねることで理解を深めていきました。」

専門的知識を多く必要とするRPAを、ただ知識として取り入れるだけでなく実用化させるには、並大抵ならぬ努力が必要なことは自明である。

さらに秋頃からは、実際に自分の会社ではRPAで何ができるのか、具体的な使用用途を考え始めたそうだ。

日頃の業務に追われる中、昼休みのたった20分のみ、おにぎり片手にRPAについて考える時間を取っていたと語る。

「なんであんなに集中できていたのか、今思い返してもよく分からないんです。何かに取り憑かれたかのように、もうとにかくRPAをやりたいと必死でしたね。」

筆者には、共に働く社員を救いたい、そのためにRPAの力を借りたい、という使命感を強く持っているように感じられた。

そうでなければ、会社のため社員のために、ここまでの時間と労力をかけることはできないのではないだろうか。

ポジションは特にないまま、最初は部署も決まらず、たった一人でRPA推進を担当したのだそう。

どれだけ孤独で苦しい闘いだったのだろうか。

ただ一方でその時期、世間でRPAが大きな話題に。連日ニュースに取り上げられ、有名企業が導入するとその事例が次々と報告されていた。役員たちは、少しずつ興味を持ち始めたという。

「とにかくRPAとは何なのか、どこがすごいのかを繰り返し説明しました。具体的にはRPA動画と手作業動画を並べた動画を作って会議で見せました。すると、得体の知れないものにお金を出せないという反応から、いいものなら試してみればいいと変わっていきました。」

対象とする作業は、人事給与システムへの入力や社会保険申請書への転記

紙に鉛筆で記入していたため、時間がかかっていた上に転記ミスも多く、ミスがないか目視確認するダブルチェックも行っていたのだそう。同僚が夜の9時までその作業をしている姿をみて、まずはここから改善していきたいと思った、という。

「ツールはWinActorを選定しました。とっつきやすいですし、サーバー費用がいらないことが決め手でした。RPA導入のためにもらえた予算は10万円だけ。成果をあげて効果を実感してもらわない限り、次に進めないと覚悟を決めました。」

役員の要求と現実の狭間で

彼女自身の工夫と、世間の波のおかげで、徐々にIT化の話やRPAの話が進んでいくようになっていった。

しかし、今度は現場やRPA導入の難しさを理解せぬままに、とにかく迅速に進めることを要求されるようになってしまったという。

そこに現実とのズレがある、と苦しそうな表情を浮かべながら語る。

「大企業は通常の業務や管理がITで行えているので、その作業をRPAに落とし込むことができる。私の会社はほとんどの業務が紙帳票を使用しています。RPAに落とし込むためには①今の業務の電子化②RPA導入、の2ステップが必要となります。

この①を進めるだけで、エネルギーと時間が大量に必要なんです。ITツールに慣れていない社員がほとんどの環境で、この2つを同時に進める苦労が役員にはなかなか理解してもらえないのが今の悩みです。」

どのツールを使うか調べてトライして決定し、社員に説明して実際に使用する実用化段階まで進める。恐らく今ある企業で使っている当たり前のツールたちをRPAと並行して導入することは、想像をはるかに超える困難さがあるのだ。

役員たちがこの状況を理解し、人材確保を決定しない限り、彼女は一人で闘い続けなければならない

これにどうして時間がかかるのか、どうして人員が必要なのかをとにかく丁寧に、分かりやすく説明しなければならない。またこれにも時間がかかってしまう、と苦しそうに話した。

「昭和気質の会社はIT投資に慣れていません。経営層がITやRPAに興味を持っても、導入するために必要な人材や資源、自社の障害がイメージできていない。きっとこういう会社って地方にはたくさんあると思うんですRPAを導入したい、導入しようと思っても、その道のりが困難すぎて、諦めてしまうのではないかと。」

全国の同じ境遇にいる人たちへ

RPA導入におけるこの困難は、一つの会社で完結する話ではない。日本の各地で、このような現象が多発しているのだ。このような会社が一社一社RPAを導入できるのは、何十年後なのだろうか。その社員らが救われるのは、何十年後なのだろうか。

それ以上に問題であることが、RPA業界がこの現状を理解しきれていない、というなのかもしれない。

「この会社にいて、制約がある状態でRPA導入を成功させてノウハウを残すことに、意味があると思っているんです。この距離感をきちんと多くの人に届けたい。そして自分のように苦しんでいる人の役に立てればな、と思います。自分と同じ状況で声をあげられず苦しんでいる人はたくさんいると思うので。」

自分の会社の社員を救いたい、そして自分のように苦しんでいる人を救いたい、そんな想いで道を切り拓いてきた彼女。

様々な苦悩があるが、孤独であるということが一番辛いのだそう。

やはり社内では新しいことを突然始めたと不思議がられ、肩身が狭い。

Twitterを通して、RPAに奮闘している仲間同士互いに応援し合うことが、エネルギーに繋がるのだという。

「その孤独を解消するためにも、今後は社内で仲間を作っていきたいです。同じ目標を持った社員と、役割分担をしながら乗り越えていきたいんです。そうでもしないと自分に限界がきてしまいそうで。組織として動くのが難しい状況なので、各課に協力してくれる社員を作りたいなとも思いますね。」

現在、前にいた人事や総務を担当する部署ではある程度成果を出せてきたと話す。今後は間接部門へ広げ、一部署すでに導入が決定している部署もあるのだという。ITに興味がありRPAに協力してくれる社員もいて、少しずつ仲間が増えてきたそうだ。

「私がRPAを導入しようと思ったきっかけが、会社の未来に対する危機感だったんです。この会社が時代に合わせて進化していけるよう、起爆剤としてまずはRPAの導入を成功させたいです。さらにRPA導入成功を通して効率的な働き方を広げ、会社の中に新しい働き方を入れたい、そんな風に思っています。」

その戦いは、日本の未来に。


彼女の奮闘は、彼女の働く会社や社員のためだけのものではない。

日本各地で同じようにRPA導入を試みている人やその会社にも影響し、ゆくゆくは日本社会の生産性の底上げに貢献するものなのではないだろうか。

苦しい働き方をしている多くの人が救われる未来が、この事例の成功により、広がっていくかもしれない。

彼女が闘っている現状や苦悩を、この記事を通して少しでも多くの方に広めることで、応援の一つとさせていただきたい。

彼女の奮闘が、少しでも多くの人に伝わることを願って。

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